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アニメはBDを待つべきか [メモ]

個人的メモ。
目安であって、ベンダーのやる気やタイトルによって画質は千差万別なため、個別のタイトルについては調査した方がいい。

1.フィルムベースで作られたアニメーション
・35mm以上(劇場用)>BDで買え
最初から劇場版として作られ、35mm以上のフィルムで撮影された作品。ディズニーアニメや、ジブリ作品、「○○劇場版」など。(35mmのOVAもある。)

35mmでも、解像度はフルHDを凌駕するため、基本的にそのままHD解像度でも問題はない。はず。HDの方がきれい。
なお、ビスタサイズやシネスコ作品であっても、「偽ビスタ」と呼ばれる、サイズはスタンダード用の動画用紙のまま、レイアウトの上下を狭くして作画された物も少なくない(描画面はスタンダードより狭い)が、それでも情報量という点では16mmより多く、細かく作画されたものはもとより、そうでなくてもタッチのニュアンスなどを(ことによっては傷やゴミ、セル浮きなども)楽しむことが出来る。

・16mm(テレビ・OVA・劇場用)>作品にもよるがDVDで充分かも?
テレビアニメのBOX、テレビ放映を再編集した劇場版、OVAなど

テレビアニメはNTSCにテレシネするのが前提であったため、ほとんど16mm。普通の16mmフィルムはHD解像度に充分とは言えない。というか、そもそもNTSC用コンテンツなので、そんなに細かく書いていないため、SDで充分。
一部劇場用作品にも、「テレビ版の再編集」「予算の都合」などで、16mmのまま、ないしは16mmで撮影して35mmにブローアップしたものがある。
ただ、後期には、「高解像度16mm」みたいなフィルムもあり、OVAやブローアップ前提の劇場版などで使用された。これはHD解像度の方が間違いなくきれい。
古い作品ではネガが腐り出している物も多く、あわててデジタルリマスターする動きが各社あったが、作品を多く抱えている会社ほど膨大な予算が必要、そもそもNTSC用、などという理由で(か何も考えずに)SD解像度の場合が多い。これらの旧作品をHDでスキャンし直す可能性は低く、BD化は遅れるか、アップコンバートされた物が出る可能性すらある。
基本的には古いOVAや、テレビ前提の16mm撮影作品は、「フィルムノイズも味のうち」という人以外、DVDをアップコンしてみる以上の画質向上が得られるかは疑問。生き残りをかけて解像度をあげていったフィルム末期の一部OVAなどはHDの意味がある。

2.デジタルベースで作られたアニメーション
・SD解像度>DVDで充分。
過渡期のテレビアニメ、劇場版、DVD前提のOVAなど。

日本のアニメ界のデジタル作製へのシフトは、画質ではなく、主に予算面の都合で進行した。そのため、作業工程のデジタル化は地上波のHD化より早く、しばらくの間納品はNTSCのD1テープ(D端子の規格とは無関係の業務用非圧縮デジタルコンポーネントVTR。のちにD2。)のまま、と言う状況が続いた。
したがって、過渡期のデジタルテレビアニメはSD解像度を前提に作られており、かつ、分業化を進めすぎた弊害で、現場担当者の知識が乏しく、勉強しようという意欲も低かったため、「SD解像度(720x480とか言う低解像度)のまんま、2値で動画を取り込んで、強引なスムージング処理をかけてよしとする」とか、東映動画に至っては、「背景はA4スキャナで取り込めるサイズしか認めない」としたため、本来大判の背景を必要とするPANなどがある場合はぼっけぼけになったりするなど、大混乱した。(背景の現物はミニチュア絵画みたいで笑えた。)
これには、「既存の製造工程を置き換えただけのソリューション(笑)」を提供して無用の安心感を現場に与えたセルシスの罪が重いが、それは別話。
と言うわけで、1990年代末~2000年くらいのデジタルアニメには、BDはおろかDVDでも見るに耐えないものも少なくない。(現在も、基本的状況は余り変わっていなかったりするのだがw)
具体的作品名は省くが、テストと称してSDなみの解像度のものを35mmに「フィルムレコーディング」(キネコ)し、半ば目をそらしながら「ああ大丈夫、わからないわからない」とそのまんま公開された劇場作品もある。

<誤解を招きそうなんで追記>
これらの状況は、現場やクライアントからの突き上げをくらって、徐々に解決され、各所の努力もあって、クオリティは16mmフィルムベース並みには回復していった。取り込み解像度は、2倍とかだとHDD容量が不安だがもうこれ以上設備投資はしたくないので、SD解像度の1.2倍とか1.4倍になった。「製造工程の無駄が省けて制作費が安くなる」(工程をそのまま置き換えるだけのソフトでそうなるはずがなかったのだが)に釣られて導入を決めた大手アニメ会社(常に採算よりもクオリティを優先するあそこやあそこのことではない。)の経営陣は「全然安くならないじゃない」と驚くと同時に、「制作費下がったはずだから」とクライアント筋には値切られ、涙目となった。
この辺の問題は、地上波デジタルが2003年から始まり、具体的な時期は各局各社まちまちだが、納品がHDとなったため、現場の知識やノウハウが蓄積されていったことも相まって、自然解消している。(なお、カメラなど撮影設備がそもそもなくなっていて、デジタルデータを出力するだけでよかったアニメのHD化は他ジャンルより若干早い。)

は、話がそれすぎたが、デジタルである以上、SD解像度前提で作られた物は、SD解像度以上の情報をいっさい持っていない。DVDをアップコンすれば充分なので、無理してBDを待ったり、DVDで買ったのを悔やむ必要はない。(Mpegノイズ軽減や、チューンされたアップコンバートに価値を見いだしたり、特典に釣られる場合はこの限りではない。)

・HD解像度>BDで買わない理由がない
HD放送用のテレビアニメ、最近の劇場版、BD前提のOVAなど

HD解像度前提で作られているのでDVDで見るメリットはない。はず。
中には解像度をどこかで底上げしている物もあるかも知れないが、視聴者の目も肥えてきているので、NTSC時代のように「この程度はテレビでは消えるから平気」みたいなのは払拭されている。と、信じたい。
なお、画面比が16:9に変わったが、ほとんどのスタジオが作画用紙は「偽ビスタ」の変形版を使用しており、描画面はかろうじてスタンダード時代と同面積くらいのもの。


と、いうことで、フィルムだからBD待つ、は16mmの場合は無意味だったり、なかなか出なかったり、やっと出てもたいしてきれいじゃなかったりするので、DVDでかっちまってもいいというのが個人的見解。
もちろん、DVDはSDサイズをさらに圧縮しているため、NTSCのソースであっても、BDの方がLD並み以上にきれいのはず!という異論は認める。それどころか、アップコンの具合によってはさらに美しくなる可能性もあるが、わざわざHDで見る価値があるか、と言われるとはなはだ疑問。
例外は末期の高解像度16mmや、スーパー16などで撮られたOVAや劇場版だが、細かい撮影データはまず公開されないため、実際に見て確かめるしかない。

しばらくSDとHDが混在する現状では、DVDとBDもどちらか一方にしないで、混在させるのが賢い選択と思われる。
というか、低ビットレートのSDのまま、BOXをBD1枚に納めるなんて方が有り難いんだけどどうなんだろう。



そもそも、日本のリミテッドアニメは階調、動きの差分などの情報量が実写に比べると著しく小さく、HD化するメリットは「主線がきれい」「背景がきれい」くらいしかないのだが、主線は中国人のシャープペンシル、背景はNTSC時代のクオリティから余り変わっていない現状では、DVDでいいという考え方も出来る。
HDの解像度をフルに活用したアニメは、まじめにやると毎回劇場版を作るような騒ぎになって予算がかさむため、まだ少ないが、そこは血のにじむような努力と工夫を(信じられない薄給で)駆使して、日本のアニメ界を(総額では)ハリウッド以上に押し上げたアニメーター諸氏がまたやってくれるであろう。(死ななければ。)

<追記>
ビットレートに関する考察が足りないと自分でも思うが、正直アニメではあんまり気にならない。個人的には。
あと3年ほど業界離れてしまったので、最近の事情は疎い。3年前までのことはもっと愚痴りたい。

タグ:アニメ
コメント(5) 

コメント 5

おくれましたが

即効でBDのバラで買ったほうがいいのか、待ちしのびBDのBOXで買ったほうがいいのか。それが問題である。

両方なんて言うブルジョワではありませぬので…
by おくれましたが (2008-10-16 05:52) 

偶然見つけたのでw

BD/DVDともYUV420(各色8bit)に減色しちゃってるてるので、SDでもアップコンしてHDでBDに収録した方が色がつぶれなくて画質向上は得られますよ。また、16mmは一応フルHD(よりちょっと大きいサイズ)まで耐えますし、HDだとやはりSDと違いって出ますよ。当然その差は35mmよりは少ないですが。(と、ZガンダムのBD-BOXを見て自分は思いました。)
16mmのHD化に関しては結構人によって考え方がバラバラみたいですが、一つ間違いなく言えるのはHDTV視聴前提だとSD映像を収録するのにDVDは器として不十分ということでしょうね。だから、基本的にSD映像がDVDで十分ということは無いと自分は思いますよ。(現実的にはそうは言ってもいられないでしょうけど。)
また、SDを高ビットレートで(おそらく低ビットレートだと商品として問題になるでしょうから)BOX1枚に収めることもBDでは可能ですが、BDのSDはアップコンしない再生機があったり等の問題があるので実際にはいろいろと難しいかと。なので、現在のBD1枚にHDで最大7-8話程度が続くのではないでしょうかね。

基本的にHDTVに移行してさらにどんどん大画面化してる現状だと、過去の資産についても可能な限りHDを要求されるのは当然なんですよね。書き込み量とか作画がどうっていうより、単に解像度が大きく違って今のHDTVには合わないからという単純な理由で。それにどうしてもDVDのアップコンだとDVDのアラが強調されてしまって特に40インチ辺りのフルHDとかになってくるとDVDアップコンは本当にボロボロで見るに堪えないですし、(特に将来的に多数化するであろう)BDの映像に慣れたユーザーがそこで納得するのだろうかという部分もあるんでしょうしね。また、特にセルBDやDVDの大半を購入してる極一部の購入者層がDVDアップコンと異なり、まだ大画面に耐える映像である16mmのHD化/SDのアップコンでのBDに価値を見出す可能性は高いでしょうしね。
結局、基本的にはHD解像度を生かしてそれなりの映像を求めるというより、SDと同じ流れで"単に解像度だけがHDになった/であること要求されてる"だけだと思いますよ。(作る側がそこでの書き込み量といった内容の部分でどういう考えを持つかは別なんですけどね。結局、そこらへんのスタンスの違いで16mmのHD化の意見が分かれてると思いますし。ちなみに、自分はHDだからと言ってそれにふさわしい書き込み量や内容である必要性はないと思ってます。単にHDTVやデジタル放送に合わせて解像度がHDであること以上は要求されてないので。もちろん、HDにふさわしい映像にすべきだし、そうでないならDVDでも十分ではないのかという意見も解りますけどね。)

ちなみに、最近末期の16mmTV作品のHDテレシネがあったのですがSDとは完全に別物のレベルで予想外にHDの恩恵があって驚きました。ただ、やっぱり35mmには少し負けますけど。これはもしかしたら稀な例なのかもしれませんが、末期の16mmはHD化の恩恵はもしかしたら結構ありそうです。
なんか、もしかしたら変なことばっかり書いてるかもしれませんが、一応こういう考え方もあるのかなって受け止めてもらえると幸いです。
by 偶然見つけたのでw (2009-04-17 10:32) 

kusube

すごい長いコメントありがとうございます。
このエントリはなんか鬱になって書いたみたいなんで、今読むと自分でもなんか変ですがww

おなじ16mmでも(同じフィルムと現像所を使っていてさえ)上がりはびっくりするほど差があったりもしたんで、結論としては「作品によるよ」というものすごい曖昧な答えしかできないんですよねw


って返事かいても読まないだろうなぁというのはブログの問題点だなぁw
by kusube (2009-06-11 04:47) 

お名前(必須)

一応2倍解像度で制作はしてたけど……みたいな感じみたいですね
当時の判断がずっと祟る感じ

http://www.toei-video.co.jp/DVD/support/note.html
>現在、東映アニメーションでは、TVアニメーション映画の製作については100%のデジタル化が進み、更に劇場アニメもその方向で決定しております。
>TVアニメの場合はTV放送時の解像度をあげるために[1280×960ピクセル]で、データを作成していますが、現在のスタンダード画面の放送基準では[640×480ピクセル]が定められているため、放送原版作成の際にこの基準に合わせ、デジタルコンポジットビデオテープ(D2)での完成原版となっています。そしてこの時点で製作時のデータは消去されてしまいます。本来でしたらこのデータ又はデジタルコンポーネントビデオテープ(D1orデジタルβカム)を利用して、DVDのオーサリング作業を行うのが最も理想的なのですが、残念ながらどちらも現存しておりませんので、完成原版であるデジタルコンポジットビデオテープ(D2)を使用せざるを得ません。
by お名前(必須) (2016-05-25 19:12) 

通りすがり

2017年現在もなお、この手の問題のせいで、アニメBDボックスは大混乱している

35mmでニュープリントされた鉄人28号がボックス2個で6万したり
ネガからHDスキャンしたマジンガーzが6万したり
2kスキャンリマスターしたダンバインが6万したり


かと思えば2000年代過渡期に作られたガンソードはどう頑張っても16ミリフィルムのBD化と大して変わらないし
ビッグオーなんかはセルで作られた一期の方がデジタルの2期より画質がいいと聞いた
by 通りすがり (2017-08-10 12:43) 

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